どうやって会話授業をすればいいかわからない人はいませんか?
文法はたくさん教えてきたけど、会話の授業はあまり担当してこなかった方もいるかと思います。
私自身、たまたま会話の授業を担当することになり、自分のスタイルを作っていくことができましたが、初めはどうすればいいかわかりませんでした。
ここでは、会話授業についてお困りの方に、私がいつもやっている授業の流れ、それからポイントなどをご紹介します。
<授業構成>
授業をする際は以下のような流れで行っています。
今回は「相談する」という場面設定で紹介していきます。
場面導入
まず、今日学習する場面を導入します。その際にウォーミングアップとして学習者にいくつか質問します。
「相談する」というトピックを扱う場合なら、以下のような質問をします。
- いつも誰に相談しますか。
- 今までどんなことを相談しましたか。
- 相談するときはどんな表現を使いますか。
学習者が多い場合は、学習者同士で質問してもらいます。
これをすることによって、今日学習するトピックに意識を持っていきます。
また、できるだけ学習者に発話させることで、会話授業のウォーミングアップになります。
最後に今日は「日本語で相談する練習をしましょう!」と言って、次に進みます。
ロールプレイ①
まず、今まで学習した表現などを使って、ロールプレイをしてもらいます。
まだロールプレイが上手にできなくてもかまいません。
ここでは上手に話せないということを学習者に自覚してもらい、授業の最後でやるロールプレイで話せるようになったことを実感し、成功体験を積むというのが狙いです。
以下がロールカードの例です。
これを時間を与えて、学生同士、または教師と学生でロールプレイをしてみます。
時間になったら、うまくできたペアに発表してもらいます。
表現の導入
次に今日学習するトピックで使用される表現を確認していきます。
「相談する」というトピックの場合であれば、以下のような表現を導入します。
- (パソコン)のことなんですけど…。
- (どのパソコンを買っ)たら、いいでしょうか。
- (パソコンを買おう)と思っているんですけど、何かおすすめはありますか。
このとき一緒にカジュアルな表現も導入します。
- (パソコン)のことなんだけど…。
- (どのパソコンを買っ)たら、いい?
- (パソコンを買おう)と思ってるんだけど、何かおすすめある?
授業後半の会話練習では、様々な相手を想定して練習をしたいので、「ですます体」だけではなくて、「普通体」を使った表現も導入しておきます。
導入したら、学習者に( )の言葉を変えて、言ってもらったりします。
会話練習
次に導入した表現も使いながら、会話を練習します。
まず、以下のような会話例を見せて、会話の流れを確認していきます。
右側に会話の流れが書いてあります。
私が授業をする場合は、まず左側の会話例を隠しておきます。
そして、右側の話の流れの部分を指して、「『話を始める』ときはどんな表現を使いますか」と質問します。
もし何も学習者から出なければ、ヒントを言ってあげましょう。
このようにして、流れを確認しながら、会話で使われる表現を確認します。
次に、この会話例をペアになって読んでもらい、全体の流れや表現の使い方を理解してもらいます。
そして、以下のようなものを用意し、穴埋めをしながら会話を練習します。
ペア、または教師と学生で練習をして、時間が経ったら発表してもらいます。
可能であれば、会話文を覚えてもらって、発表するという形ができるといいです。
練習は1つだけじゃなく、他の話題の練習があってもいいと思います。
これで学習者は会話の流れが頭に入るでしょう。
ロールプレイ②
最後に授業の集大成としてロールプレイをします。
ロールカードを準備します。
よくできる学習者なら、何も見ずに自由にロールプレイをさせてみます。
まだ難しそうな学習者は、まず先ほどの会話練習を見ながらやってみて、それからだんだん見ないようにロールプレイをさせてみましょう。
早く終わる学習者もいると思うので、いくつかロールカードを用意しておくといいです。
各ペアが終わったら、発表してもらいます。
これで会話授業が終わります。
<最後に>
今回は会話授業のポイント・流れを説明しました。
流れのおさらい
1.場面導入 |
2.ロールプレイ① |
3.表現の導入 |
4.会話練習 |
5.ロールプレイ② |
会話授業にはいろいろなやり方があると思います。
学生、またご自身のスタイルに合った授業を見つけて、会話授業にどんどんチャレンジしていきましょう!
会話テキスト紹介
会話に挑戦!中級前期からの日本語ロールプレイ
このテキストは日本で生活する上で役に立つ22のトピックが載っています。
目的→ウォームアップ→ロールプレイ→会話を考えよう→表現・語彙→もう一度発表しよう→コラム、の順で進めていくものになっていますが、ご自身で順番をアレンジしてもいいかと思います。
<各課のトピック例>
- 自己紹介
- 先生を飲み会に誘う
- 希望の部屋を探す
- 日常生活でいろいろなことを頼む
- 友達と意見を出し合う など
このテキストは文法は勉強したけど、まだ会話がうまくできないという学習者に向いています。
使用文法は難しくなく、N3ぐらいまで勉強していれば、問題がない内容になっています。
新版 ロールプレイで学ぶ中級から上級への日本語会話
このテキストは初めにその課のトピックについて軽くやりとりをして、その後すぐにロールプレイを始めるというものになっています。
ロールプレイの後に表現の練習があります。学習者は初めはうまく話せなかったけど、表現を練習したあとは、話せるようになるというのが狙いのテキストです。
ロールプレイは70種類あって、このテキストで相当な量の会話を練習することができます。
<ロールプレイの例>
- 授業の後、クラスメートをカラオケに誘う。
- 友人の出身地に新婚旅行に行くので、その友人にその土地の有名な物、気を付けたほうがいいことを聞く。
- レストラン・喫茶店で注文した料理と出された料理が違ったので、店員に苦情を言う。 など
とにかくたくさん練習したいという学習者に向いているテキストです。
中上級学習者のためのブラッシュアップ日本語会話ーみがけ!コミュニケーションスキル
このテキストは「相手の気持ちに配慮しながらも、自分の考えや気持ちをきちんと伝えることができるようになる」ことを目的としています。
そのため、相手との関係性に応じてどのような表現を使って会話をするのか、ということを学ぶことができます。
「1.許可を求める」では「~させていただいきたいのですが、よろしいでしょうか」「~させていただけますか」「~てもいいですか」など、関係性や状況によって、どの程度、丁寧な表現を使うかなど確認しながら進めていきます。
<各課のトピック>
1.許可を求める
2.依頼する
3.謝罪する
4.誘う
5.申し出をする
6.助言する
7.不満を伝える
8.ほめる
社会生活のいろいろな場面で、日本人と上手にコミュニケーションを取りたい!という学習者におすすめの本です。
にほんごで働く!ビジネス日本語30時間
ビジネス会話を教える際はこちらを使用しています。
このテキストはビジネス会話に特化していて、語彙や表現を学びつつ、会話練習、ロールプレイにつながっていきます。
日本の社会マナーなどが書いてあるコラムもあり、非常に学びになると思います。
8つの課に分けられていて、各課で1.目的、2.クイズ、3.表現、4.ことば、5.談話、6.会話、7.ロールプレイ、8.練習、9.ビジネスコラムという構成になっています。
<各課のトピック>
1.紹介する
2.あいさつをする
3.電話をかける
4.注意する・注意を受ける
5.頼む・断る
6.許可をも取る
7.アポイントをとる
8.訪問する
このテキストの文法レベルはN3程度ですが、語彙は難しい言葉が多用されているので、「4.ことば」を予習してもらってから、授業に臨んでもらったほうがいいかと思います。